働くことの基礎知識 アルバイトについての基礎知識をまとめております。

第5章 問題発生編

1.募集時のトラブル

アルバイトを探していると、求人内容のよく分からない募集を見かけたり、強引な勧誘を受けたりすることがあるかもしれません。おかしいと思ったり、不安を感じたり、自分の意思と異なるような場合は決して関わらないようにしましょう。
中には危ない仕事や実際はアルバイトの募集ではなく、その他の目的で人を集めている場合があります。

2.面接関連のトラブル

面接ではあなたが仕事に適しているかを判断するため、いろいろな質問をされます。でも本人に責任のない事項(本籍、出生地、家族に関することなど)や本来自由であるべき事項(思想・宗教についてなど)は聞いてはいけないことになっています。
また、あなたが不快を感じるような、仕事に関係のない個人的な事項も質問すべきではありません。このような質問に答える必要はありませんし、面接でそのような質問をする会社の姿勢には問題があります。

あくまで面接は仕事の採否を決定する場面です。仕事に関係のない個人的な質問や連絡・呼び出しには応じないように注意しましょう。

3.仕事に関するトラブル

実際働き始めたら、契約時に説明を受けた労働条件と違う場合や、自分が想像していた仕事と違うように感じる場合があります。
会社は労働契約を締結する際に、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません。また、このとき明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は労働契約を解除することが出来ます。会社に確認して納得がいかない場合は退職を申し出ましょう。

次に自分が想像していた仕事と違う場合は良く考えてみましょう。周りの人に相談するなど、話をすることで違和感が薄れる場合もあります。でもどうしても続けられないと判断したときは退職を申し出ましょう。
無理をして働き続けることはありませんが、会社に対してきちんと退職の手続きを行いましょう。

4.労働時間や休憩、休日に関するトラブル

労働者の健康を守るため、労働時間や休憩、休日については法律で決められています。もちろんこの法律はアルバイトにも適用されます。
しかし、社会にはさまざまな種類の仕事があります。そのため労働時間の法律は労働者の健康に配慮しながらも実際の業務が円滑に進むように、例外制度も設けてあります。よって次の法律と異なることが割増賃金の発生や法律違反となる場合ばかりではありませんので、注意して下さい。

また、法律上問題のない労働時間でも体調や学業に悪影響を及ぼすと感じる場合は、会社の人に相談してみましょう。学生生活を充実させるためにも、良い仕事をするためにも自分に合ったワーク・ライフ・バランスをよく考えましょう。

労働時間(残業時間)とは

  1. 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を越えて、労働させてはならない。
  2. 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を越えて、労働させてはならない。

(労働基準法〔以下「労基法」〕第32条)
上記が法定労働時間といい、会社はこれを超えて労働させる場合は割増賃金の支払いが必要になります。

休憩とは

使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
(労基法34条)

休日とは

  1. 使用者は労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない。
  2. 4週間を通じ4日以上の休日を与えることでもよい。

(労働基準法35条)

5.給与に関するトラブル

働いた分のお給料をもらうことは労働者にとって最も重要なことです。法律でも賃金の支払について次の通り決められています。よって支払い金額について不明な点があったり、支払期日が遅れたりしている場合は必ず会社に確認しましょう。

退職後の賃金の不払いについても会社に問い合わせてみましょう。きちんと給与を支払うことは会社の最大の責任の一つです。

万が一、会社が倒産して退職時に給与が支払われなかった場合も、全額ではありませんが、一定の要件に該当した場合、国が立て替えて支払ってくれます。労働者の請求に基づいて支払われますのであきらめないようにしましょう。請求用紙は最寄りの労働基準監督署にあります。

賃金支払の5原則

  1. 賃金は通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
  2. 賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。

(労基法24条)

6.退職時のトラブル

労働者に退職の自由があるように会社にも労働者を「解雇」する権利はあります。しかし、理由によっては解雇が認められない場合もあります。また、突然の解雇には「解雇予告手当」の支払義務があります。

解雇とは

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当(犯罪行為から長期無断欠勤まど)であると認められない場合は、その権利を乱用したものとして、無効とする。
(労基法18条の2)

解雇の予告

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。予告日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することが出来る。
(労基法20条)

7.労働災害と通勤災害

仕事中や通勤途中にケガや病気になった場合は、補償が受けられます。
労働者災害補償保険では業務上の事由または通勤途中の労働者の負傷、疾病、障害、死亡について保険給付を行っています。もちろんアルバイトにも適用されます。
手続きは会社が行いますので、ケガなどをしたらすぐに会社に報告をしましょう。

万が一、会社が手続きを拒絶した場合は、国(会社の所在地の労働基準監督署)に直接請求することも可能です。決して泣き寝入りしないようにしましょう。
また、労働災害や通勤災害のけがや病気に健康保険や国民健康保険の被保険者証は使えません。

8.その他の問題

セクシャルハラスメント(セクハラ)

「セクハラ」はよく耳にする言葉だと思います。ちょっと難しいのですが、「職場において行われる労働者の意に反した性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者が不利益を受けること、およびそれに付随する就業環境の悪化」と定義されています。
「労働者の意に反して」とありますので、相手に悪意はなくても不愉快を感じた場合はセクハラに繋がります。
男女雇用機会均等法でも会社はセクハラから労働者を守る措置を講ずるよう定めています。一人で我慢したりせず、家族や周りの信頼できる人に相談したりして解決策を考えましょう。

パワーハラスメント(パワハラ)

「パワハラ」は一般的に上司が職場での地位や権力を利用して、仕事とは関係のないことや仕事上でも適切な範囲を超えて、圧力を掛けて労働者に精神的苦痛を与えることを言います。
何者もあなたの心身を不当に傷つけることは許されません。セクハラの場合と同じく、解決策を考えていきましょう。

9.問題解決に向けて

実際に問題が起こったとき、自分の力では対処できないように感じたときは、決して一人で悩まず家族や信頼できる周りの人に相談してみましょう。
それから、会社の人と話をしてみることも大切です。単なるコミュニケーションの行き違いだったということもあります。しかし、やはり会社の人とは話ができない、話をしても解決しないという場合は行政機関に相談する方法もあります。

国は仕事をめぐるさまざまな問題が起こった時、労働者を守るための相談窓口「総合労働相談コーナー」を設置しています。
そこでは労働条件、女性労働問題、募集採用、職場環境を含め、労働問題に関するあらゆる分野の案件を専門の相談員が、面談あるいは電話での相談を受け付けています。女性相談員がいる窓口も用意してあります。

相談窓口の連絡先は各都道府県の労働局のホームページの「総合労働相談コーナー」から検索できます。(兵庫労働局 http://www.hyougo-roudoukyoku.go.jp/ 大阪労働局 http://www.osaka-rodo.go.jp/)また労働なんでも相談ダイヤル(フリーダイヤル0120-939-009)も設置してあります。ただし携帯電話PHS等からは使用できませんのでご注意下さい。

最初はどこの相談窓口に連絡をしても構いませんが、相談内容によっては別の窓口(会社の住所の管轄行政機関(労働基準監督署)など)を紹介される場合があります。その場合は担当相談員の人の指示に従ってください。
また、相談するときは次のようになるべく具体的に話しましょう。

  • 「○○という会社」で「○月○日」に「○○という出来事」があり困ったので相談したいと思います。
  • 「給与不払いの件」「解雇の件」「労働災害の件」etc.でお尋ねしたいことがあります。

あなたの相談したいことが上手く伝わるように、予め、困っていることや相談したいこと・尋ねたいことをメモにまとめておくと良いでしょう。
落ち着いて伝えることが出来ます。「労働局」は皆さんには馴染みがなく、なかなか相談しにくいと感じるかもしれませんが、専門の相談員が対応し、もちろん守秘義務もありますので困ったときは相談して下さい。

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